研究概要 |
ストレスの影響としては昨年度に引き続き,有機スズによる海馬障害について,栄養の偏りの影響としては,セレン欠乏による酸化ストレスと関連すると考えられるドパミン伝達系の障害について検討を行った. 1.ストレスによる脳・神経系への影響を検討する目的で、ラットに海馬を特異的に傷害するトリメチル錫化合物を投与し,海馬錐体細胞層のアポトーシスをTUNEL法により観察,これを副腎摘出による結果と比較した.その結果,それぞれ単独の処理では海馬錐体細胞層にアポトーシスが生じ,その部位には明確な違いがみられた。両方の処理では相乗的な効果を認めた.2.慢性の栄養の偏りによる脳・神経機能への影響としては,セレン欠乏動物における神経行動機能の評価を試みた.評価にはオープンフィールド行動および運動-感覚機能の協調を見るためのロタロッド試験を用いた.5系統のマウスを用いて検討したところ,C57BL系は他の系統に比べ,いずれの指標においてもセレン欠乏に敏感に反応することが判明した.この結果は,今後効率的に実験を進める上で有用であるとともに,遺伝的な背景による環境要因影響の修飾という方向への発展性も示唆した.これらセレン欠乏としたマウスについてドパミン細胞の免疫組織染色を行った.予備的に少数例を検討した結果では,欠乏群と対照群との間に大きな差は認められなかった.来年度は他の神経タンパクへの影響,酸化ストレス指標との関連も考慮して,ストレスと栄養欠乏に同時曝露する条件での検討を実施する.
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