研究課題
紫外線(UV)照射などによって生じる遺伝子損傷の際には、まず、p53が誘導され、そのp53により、gadd45遺伝子がプロモーターレベルで誘導される。そのgadd45タンパクがDNA修復およびアポトーシス誘導を起こすことにより、変異が生じた細胞を正常化したり、除外したりすると考えられている。前回、私達は、食物繊維の細菌発酵により生ずる短鎖脂肪酸である酪酸が、p53非依存的にgadd45遺伝子を活性化することを見い出し、そのメカニズムの解析を行なった。今回、我々は酪酸以外にもgadd45を活性化できる薬剤があると考え、gadd45活性化薬剤のスクリーニングを行なった。その結果、野菜や果物に含まれるフラボノイドの一種であるケルセチンが、HeLa細胞でgadd45遺伝子を活性化することが明らかとなった。HeLa細胞では、ケルセチン処理によってp53の活性化が見られなかったことから、ケルセチンによるgadd45遺伝子の活性化は、p53非依存的であると考えられた。また、gadd45の活性化は、mRNAレベルで認められたが、gadd45プロモーター活性には、変化が認められなかった。このことは、UV照射や酪酸によるgadd45遺伝子の活性化の機構とケルセチンによる活性化機構が異なることを示唆している。また、最近、他のフラボノイドとしてルテオリンやアピゲニンも、gadd45遺伝子を活性化することを見い出した。以上より、ケルセチンなどによるp53非依存的なgadd45遺伝子の活性化は、遺伝子修復能力を高める新しい方法として今後重要視される可能性を考えている。
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