研究概要 |
我々はこれまでの研究で,被虐待児の胸腺が虐待の程度及び期間に比例して著明に退縮することを見いだし報告した.さらに,本年度までのさらなる詳細な解析で,この胸腺退縮・胸腺細胞減少が胸腺細胞分化の特定のstageの減少に依るものであることを見いだし報告した(Forensic Sci.Int.101:55-63,1999).すなわち,被虐待児胸腺では,胸腺細胞のdouble positive stage,中でも特にbcl-2がdown regulateされる時期の胸腺細胞の著明な減少が胸腺退縮に関与している可能性が高く,この細胞構成の変化が,虐待時の受けた精神的ストレスの評価におけるひとつの指標となりうることを示した. これら一連の研究の過程で,ヒト胸腺組織において,胸腺所属のリンパ節(傍胸腺リンパ節)の存在を見いだし,詳細な解析をおこない報告した(Immunol.97:301-8,1999).さらに,傍胸腺リンパ節と形態的に極似した胸腺実質内のリンパ節の存在を見いだした(未発表).これら胸腺所属のリンパ節は,胸腺の生理的退縮やストレスに伴う退縮に連鎖するように退縮するらしいという結果を得ており,このリンパ節の生理的意義,疾患・免疫機能に対する影響を現在解析している.
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