研究概要 |
C型肝炎ウイルスの持続感染と肝発癌は密接に関連している。ウイルス側の要因としてC型肝炎ウイルス遺伝子の特定の構造が発癌に関連していることが示唆されているが、現在まで発癌と関連するC型肝炎ウイルス遺伝子領域は明らかにされていない。そこで、C型肝炎ウイルス蛋白の直接的な発癌機序の解析、肝細胞癌と関連する宿主遺伝子の解析、および発癌に関連するC型肝炎ウイルス遺伝子構造の解析という3つの方向からアプローチしている。まず今年度は肝細胞癌組織に特異的に発現し発癌に関与している遺伝子を同定する目的で、肝細胞癌症例の癌部と非癌部組織での遺伝子の発現をsupression subtraction hybridization法を用いて解析した。手術により得られた肝細胞癌の癌部、非癌部から抽出したtotal RNAより癌部、非癌部特異的なcDNAを合成し、SMART-PCRにより増幅した。非癌部由来のtester cDNA両末端に異なるadaptorを結合し、それぞれを癌部由来の過剰量のdriver cDNAとhybridizeさせた後、再度過剰量のdriver cDNAとhybridizeさせることによって、両端に異なるadaptorをもつ非癌部特異的二本鎖cDNAを生成した。このcDNAをsupperssion PCR法を用いて選択的に増幅し、得られた遺伝子を解析した。その結果、7つの既に知られている遺伝子(focal adhesion kinase,deleted in colon cancer, guanine binding inhibitory protein a, glutamine synthetase,ornithine aminotransferase,M130,pepsinogen C)と2つの未知の遺伝子が肝細胞癌で高発現しており、decorinが癌部で抑制されていた。
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