研究概要 |
HCVreplicon(R)を用いてHCV遺伝子変異が感染培養細胞に及ぼす影響を検討した。R増殖はNS5A遺伝子構造に規定されており、ISDR上流のserine残基の変異は増殖活性にcriticalであった。またadaptive mutationを持たないNS5A蛋白はtransにR増殖を抑制した。次に、R増殖の際に感染培養細胞内で発現する遺伝子群をDNA microarray法で検討した、1,217遺伝子の大部分は有意に変動しなかったが、IL-8, GR01, GR02などのchemokine(CK)遺伝子の発現が低下していた。C型慢性肝炎組織における包括的宿主遺伝子発現と感染培養肝細胞における遺伝子発現に対するNS5A蛋白の作用を解析したところ、慢性肝炎で肝組織内CK遺伝子の発現が増強しており、NS5A蛋白自身が制御配列の活性化によりCKの過剰発現を誘導することが示された。NS5A蛋白はCK遺伝子発現を修飾することにより、C型慢性肝炎の病態形成に関与すると考えられた。更に、アデノウイルスベクターを用いて培養肝細胞にHCV-core蛋白を発現させ、細胞内mRNAの発現の変化をDNA microarrayを用いて解析検討したところ、core発現細胞においてv-myc, PCNA, DACD-1, HDGF等の発現が上昇し、v-jun, VEGF, IRF-1, IL8などの発現が抑制されていた。これらの変化が肝発癌と関連している可能性が考えられた。
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