研究概要 |
我々は,細胞の剥離・変形刺激に応答する遺伝子につき検索する過程で,細胞骨格系の制御に関与すると考えられる,ARF-GEP 100の同定に成功した.興味深いことに,in vitroでの解析の結果,ARF-GEP 100は,エンドサイトーシスのプロセスやアクチンを中心とした細胞骨格系の制御に深く関与すると考えられている,ADP-ribosylation factor 6(ARF6)の活性化因子(GDP/GTP交換因子;GEP)であることが明らかになった.ARF-GEP 100は,841個のアミノ酸からなり,Sec7 domain,IQ-like motif,PH-like domainを有している.ARF6に対する作用は特異的で,ARF1,5に対する活性化は2〜3倍なのに対し,ARF6に対しては12倍もあった.Incomplete IQ motifが存在するが,calmodulinには影響を受けなかった.Brefeldin Aやphospholipids(PIP_2,PIP_3)に対しては感受性を示さなかった.Northern blotで組織分布をみると,白血球,脳,脾臓,肺,肝,腎などに多く発現していた.白血球系に発現が強いこと,ARF6が細胞運動に大きく関わっている可能性があることから,種々の炎症性肺疾患の病態形成に大きな役割を演じている白血球の遊走能へのARF6の関与や,癌細胞の転移・浸潤能におけるARF6の役割について検討を加えているところである.
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