研究概要 |
本年度は,昨年度に細胞の剥離・変形刺激に応答する遺伝子の探索過程で同定したARF-GEP100についてさらに検討を加えると同時に,新たに細胞の剥離・変形刺激応答への関与が示唆されるに至った,ピリミジン代謝酵素であるThymidine phosphorylase(TP)に関しても検討を開始した。 ADP-ribosylation factor 6(ARF6)の活性化因子であるARF-GEP100については,細胞骨格系の制御への関与が強く示唆されることから,まず癌細胞における役割につき検討を始めた。ヒト非小細胞肺癌切除組織中のARF-GEP100の蛋白発現をwestern blot法にて調べたところ,隣接正常肺組織に比べ,腫瘍部分で高発現する傾向が認められた。今後は,種々の肺癌細胞株を用い,細胞骨格系への関与の有無につき詳細に検討を加える予定である。 また,TPはこれまで血管新生物質として注目されてきたが,本研究の遂行過程で細胞骨格系の制御に関与している可能性が示された。TPは,A549肺癌細胞株の増殖能には影響を及ぼさなかったが,Matrigelを使ったin vitroのinvasion assayでは癌細胞の浸潤能を増強させた。今後は,TPによる浸潤能獲得の分子メカニズムにつきさらに検討を加える予定である。
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