研究概要 |
本研究では、発生工学的手法を応用し、脂質性メディエーターの炎症性肺疾患発症機序における重要性について検討する。特に、ARDS、特発性間質性肺炎、気管支喘息などにおける、PAFおよびエイコサノイド関連遺伝子の意義を明らかにすることにより治療の標的を明確にし、有効な治療法、治療薬の開発および実用化を目的とする。本研究では、発生工学的技術を用いて作成した遺伝子ノックアウトマウスおよびトランスジェニックマウスを使用する。 平成11年度: <PAFR-Tg、PAFR-KO、cPLA_2-KOマウスの遺伝的背景純化・作成>PAFR-Tgマウスを交配させ得られたマウスを、生後3週目にPCR法を用いてゲノム解析し、PAFR-Tgマウスか否かを判別した(S.Ishii,T.Nagase,EMBO J.1997)。PAFR-Tgマウスのlitter mateで、PAF受容体遺伝子発現が正常であるものをコントロールとした。PAFR-KOマウス系、cPLA_2-KOマウス系についても、同様に交配・ゲノム解析を施行し、遺伝子ノックアウト群とコントロール(野生型)群に鑑別した (N.Uozumi,K.Kume,T.Nagase.Nature 1997)。各群とも、遺伝的背景を均一にするため、C57BL/6マウスへのバッククロスを10代まで進めた(99.9%に純化) <炎症性肺疾患におけるPAFR、cPLA_2 遺伝子発現の関与>炎症性肺疾患モデルとして、ARDS、特発性間質性肺炎、気管支喘息の動物モデルを用いた。マウス各群に、塩酸気管内投与(ARDS)、ブレオマイシン気管内投与(特発性間質性肺炎)、抗原感作(気管支喘息)などの処置を行い、生理学的、生化学的、免疫組織化学的、分子生物学的検討により、PAF受容体遺伝子発現およびcPLA_2遺伝子発現と炎症性肺疾患の関係について評価・検討を加えた。
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