ヒトのプリオン病患者において、血液でも感染性の有無に決着をつけることは、完全な輸血および血液製剤にとってなくてはならない情報である。事実、英国では新型CJDの存在および発病前のリンパ系の濾胞樹状細胞への異常プリオン蛋白の沈着などから、英国は自国の血液を利用した血液製剤の作製を断念しており、この原因となった牛海綿状脳症はヨーロッパ全域に広がりつつある。我々は、ヒト・プリオンに対して高い感受性を示す遺伝子導入マウスモデルを利用してプリオン病の患者の末梢血液内に感染性が存在するのかを検討するため、限界希釈法を用いたタイトレイションを行った。ヒト化マウスの発病脳を用いて、限界希釈によって感染性をチェックしたところ、10^<-7>希釈の脳乳剤まで発病し、50%の致死量単位はlogタイターで、8.16log LD_<50>/gramであった。このように、高い感受性マウスの開発に成功し、さらに、リンパ組織の濾胞樹状細胞(FDC)を用いたバイオアッセイ法を確立した。このFDCのバイオアッセイ法を利用すると、従来600日必要としたバイオアッセイ法がわずか30日まで短縮されること、さらに英国で問題となっている新型CJDもアッセイ可能なこと、そして、限界希釈による検討を加えた結果10^<-7>希釈でも感染性が検出できることが明らかとなった。つまり、従来のどんなバイオアッセイ法より高い感度でアッセイでき、しかもアッセイ期間の短縮が可能となったのである。今後、このアッセイ法を用いて、ヒトの組織中に含まれる微量な感染性をチェックするとともに、今回の成功を踏まえて、ウシ型のプリオンのアッセイ法に発展させる予定である。
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