研究概要 |
1.拡張型心筋症(慢性心筋炎)患者の心筋組織内浸潤T細胞および末梢血リンパ球のT-cell receptor(TCR)のclonalityの解析:拡張型心筋症(DCM)において遷延性の心筋障害を惹起していると考えられる心筋組織内の何らかの抗原(自己抗原?)に特異的な浸潤T細胞(pathogenic T-cell)を単離し、その対応抗原を検索することを目的として、今年度は、浸潤T細胞のTCRの抗原特異性(Vβclonality)を末梢血リンパ球と比較検討した。一般に末梢血リンパ球は、健常人ではpolyclonalなTCR Vβclonalityを呈しSSCP上smearpatternとなるが、DCM患者6例ではsmearの中にexpandしたcloneを多数(46±28 clones[mean±SD])認めた。心筋内浸潤T細胞はoligoclonal(135±24 clones)で、SSCP patternは同一心臓内の各部位で変化したが、そのうち約40%にあたる(54±17 clones)が」異なる3部位に共通であった。この各部位共通cloneは心筋全体に共通の抗原を認識すると考えられることから心筋障害にprimaryの役割を果たすpathogenic T-cellの候補と考えられ、そのうちおよそ40%の(19±7 clones)が末梢血中でもexpandしていた。以上より、DCMの病態にprimaryの役割を果たすT-cell cloneを末梢血中から分取することによりそれらのcloneが認識する抗原をscreeningして同定できる可能性が示された。 2.心筋炎におけるT細胞を介する心筋障害にcriticalなcostimulatory moleculeの同定:我々はこれまでにマウスのウイルス性心筋炎の実験系を用いて、T細胞活性化のcostimulatory moleculeとしてICAM-1,B7-1,CD40が心筋障害に重要であることを明らかにしてきた。今年度は、TNF receptor/ligand superfamilyに属するcostimulatory moleculeであるCD27/CD27L、CD30/CD30L、OX40/OX40L、4-1BB/4-1BBL、Fas/FasLについて、いくつかの疾患モデル・マウスを用いて解析したところ、、4-1BB/4-1BBL、Fas/FasLを介するpathwayが心筋炎の心筋障害に有意の役割を果たしていることが明らかとなった。
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