研究課題/領域番号 |
11557049
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 展開研究 |
研究分野 |
循環器内科学
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
藤原 久義 岐阜大学, 医学部, 教授 (80115930)
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研究分担者 |
湊口 信也 岐阜大学, 医学部, 助教授 (20190697)
植松 俊彦 岐阜大学, 医学部, 教授 (50151832)
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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キーワード | スタニング / 収縮能 / MOR-14 / 再灌流障害 / ラクテート / ATP |
研究概要 |
平成11年度は冠動脈狭窄ページング負荷によるイヌ狭心症に対するα-1、6-glucosidase inhibitor、N-hydroxyethyl-1-deoxynojirimycin(miglitol)の効果とそのメカニズムについて検討した。ビーグル犬15匹を対象に開胸し、安静時にはST変化のない程度の左前下降枝狭窄を作成した。心拍数160/minというページングによる負荷+isoproterenolによる収縮期血圧160mmHgという負荷10分間を行い、double productを2倍に増強し、それによるST低下の程度を観察した。miglitol非投与時をコントロールとした。miglitol投与後、ST低下の程度はコントロールと比較し、有意に改善した。カラーマイクロフェアを狭窄前、狭窄時、負荷狭窄時に注入し、局所心筋血流量を測定した。局所心筋血流量は狭窄前に比較し、狭窄時、負荷狭窄時には約80%に低下した。しかし、ミグリトーリ投与により影響を受けなかった。虚血領域の左室心筋のグリコーゲンおよびATPの減少はミグリトール群で改善した。虚血領域の左室心筋ではα-1、6-glucosidase活性はブロックされた。さらに、miglitolの虚血心筋保護効果はprotein kinase Cのブロッカーであるチエルリスリンによってブロックされた。すなわちミグリトールはα-1、6-glucosidaseブロックを通じて、負荷虚血時のグリコーゲン代謝をブロックし、ラクテートの産生をおさえ、虚血心筋保護効果を示した。この効果は側副循環や冠血流とは無関係であり、protein kinase Cの活性化と関連する。 平成12年度はイヌ・ウサギおよびラットにおいて短期間虚血・再灌流を行いスタニングモデルを作成し、α-1、6-glucosidase inhibitorであるN-methyl-1deoxynojirimyam(NMDN)が再灌流中の心機能低下(スタニング)を予防できるか否か、予防とすればそのメカニズムは何かを検討した。心拍数はペーシングによって、収縮期圧は灌流液の圧を一定にすることによってコントロールした。その結果、次のことが明らかになった。 1)NMDNは虚血前投与において非投与群と比較し、虚血中の左室の収縮能および拡張末期圧の上昇を改善しなかった。しかし、NMDN虚血前投与は非投与群と比較し、再灌流中の左室収縮能を増強し、左室拡張末期圧を有意に低下させた。すなわちスタニングを改善した。2)このスタニング改善効果は虚血後の再灌流時のNMDN投与ではみられなかった。3)NMDN虚血前投与は非投与群と比較し、虚血中の心筋細胞におけるグリコーゲンおよびATPの低下を有意に抑制し、ラクテートの増大を軽減した。また、CPK、LDHのcoronary sinusを介した灌流液中への流出の増大を有意に減少させた。以上より、α-1、6-glucosidase inhibitor、NMDNは、虚血時にα-1,6-glucosidaseの活性をブロックすることにより、グリコーゲン代謝の抑制を通じて、ラクテートの増大を軽減し、心筋細胞内のpHの低下を防ぎ、ATPの減少を予防する。そして、虚血時の心筋細胞内pHとATPの保持により再灌流中のスタニングを改善することが明らかになった。このことは、α-1、6-glucosidase inhibitorが新しい再灌流障害予防薬となる可能性を示唆し、狭心症・心筋梗塞の臨床にとって重要な所見である。
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