研究課題/領域番号 |
11557054
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 展開研究 |
研究分野 |
循環器内科学
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
酒井 尚彦 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (80294073)
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研究分担者 |
平野 賢一 大阪大学, 医学系研究科, 助手
船橋 徹 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (60243234)
山下 静也 大阪大学, 医学系研究科, 助教授 (60243242)
荒金 克己 富士レビオ(株), 中央研究所・医薬第8研究室, 研究員
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研究期間 (年度) |
1999 – 2000
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キーワード | 動脈硬化 / コレステロール逆転送 / タンジール病 / 高比重リポ蛋白(HDL) / コレステロールエフラックス / cdc42 / lipid transport / cDNA subtraction |
研究概要 |
タンジール病(Tangier Disease:TD)はHDLを介するコレステロール引き抜き(efflux)の異常に起因するHDL欠損症である。我々はTD患者のマクロファージ(MΦ)と皮膚線維芽細胞に発現しているmRNAをcDNAサブトラクション法にて正常者のそれらと比較した結果、TD患者においては低分子量G蛋白cdc42の発現が低下しているいことを見出した。TD患者細胞におけるcdc42発現の低下はNorthernおよびWestern blottingにても確認した。このcdc42とコレステロール引き抜き(efflux)との関係を検討するため、cdc42のdominant negative(cdc42DN)とdominant active(cdc42DA)の両フォームを作製した。MDCK細胞に遺伝子導入してeffluxを検討すると、cdc42DNを導入した細胞においてはeffluxが低下し、cdc42DAを導入した細胞においてはeffluxが増加した。このことよりcdc42がeffluxに関与する細胞内分子であることが明らかとなった。また、TD患者皮膚線維芽細胞においてはeffluxの低下と共にFRAP(fluorescence recovery after photobleaching)にて観察した脂質の細胞内挙動に異常が存在し、このことがeffluxの低下と関連する可能性が考えられた。このTD患者の皮膚線維芽細胞にアデノウィルスを用いてcdc42DAを導入するとeffluxおよび脂質の細胞内挙動が改善されたことより、TDにおける病態にcdc42が深く関与していると考えられた。cdc42には種々のeffector分子が存在するが、この中で細胞内骨格(アクチンフィラメント)の形成に関与するN-WASPがcdc42の下流でeffluxに関与していることも明らかにした。さらに、cdc42の低下は高齢者から得られた皮膚線維芽細胞および継代を繰り返した細胞においても低下しており、加齢に伴うeffluxの低下とそれに伴う動脈硬化との関連も示唆された。 生体内での動脈硬化防御機構としてHDLを介したコレステロール逆転送が重要であるが、このコレステロール逆転送の第一段階としてのefflux関連遺伝子としてcdc42-N-WASP系の関与を明らかにした。今後はこの系を賦活することによって動脈硬化の予防のみならず、退縮をも期待できる新しい治療法の開発が可能になると思われる。
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