研究課題/領域番号 |
11557056
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
江頭 健輔 九州大学, 医学部・附属病院, 講師 (60260379)
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研究分担者 |
古森 公浩 九州大学, 医学部・附属病院, 講師 (40225587)
居石 克夫 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (70108710)
市来 俊弘 九州大学, 医学部・附属病院, 助手 (80311843)
西田 健一 第一製薬, 創薬研究所, 主任研究員
甲斐 久史 久留米大学, 循環器病研究所, 助教授 (60281531)
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キーワード | 動脈硬化 / 再狭窄 / monocyte chemoattractant protein-1 / 遺伝子治療 |
研究概要 |
新規遺伝子治療法の開発:血管壁の炎症(単球/マクロファージの接着侵入)は動脈硬化・再狭窄などの血管病の成立に必須のステップである。しかし、従来、血管壁の病的炎症を効率的かつ安全に抑制できる治療法はなかった。我々は単球/マクロファージの遊走に必須の役割を持つmonocyte chemoattractant protein-1(MCP-1)の機能を生体レベルで阻止できる新しい抗MCP-1遺伝子治療法を開発した。すなわち、MCP-1のN末端欠失体(mutant)のなかでN末端の2番目から8番目までのアミノ酸が欠損した7NDがMCP-1受容体の強力なdominant negative inhibitorとして作用すること、7NDプラスミド遺伝子を動物実験の骨格筋に導入すると7ND遺伝子が発現し同タンパク質が循環血中に分泌されること、分泌された7NDは単球のMCP-1受容体(CCR2)に結合し受容体シグナルを阻止すること、遠隔臓器のMCP-1による単球浸潤を著明に抑制できること、を明らかにした。この方法を用いれば、標的臓器に遺伝子を直接導入する必要がないので、MCP-1受容体を容易に阻止することが出来る。 新規治療法の有用性、応用性:この遺伝子治療法により慢性的NO産生抑制ラットモデルの早期炎症と後期血管肥厚が抑制できた。ApoE欠損マウスの動脈硬化も抑制し、プラーク安定化をもたらした。バルーン傷害モデル(ウサギ、サル)の再狭窄反応(新生内膜形成、陰性リモデリング)を抑制した。血管病変部位に直接遺伝子を導入する必要はなく繰り返し投与により長期間効果を維持できるので、慢性疾患に対する新規遺伝子治療法としても有用と考えられる。この方法は遺伝子導入が難しい臓器の難治性炎症性疾患(肝線維症・肝硬変、肺線維症、肺高血圧症、腎炎・腎硬化症、関節リウマチ、移植血管不全症など)におけるMCP-1の役割の解明研究ならびに治療研究に応用できる。 新規治療法の安全性:我々の方法ではウィルスベクターを用いる必要はない。サルを用いて毒性試験を行い、7NDプラスミド遺伝子筋注の毒性が見られないことを確認した。したがって、我々の方法の安全性は高いと考える。 まとめと今後の課題:我々の考案した方法は炎症制御による難治性血管病の新しい遺伝子治療になる可能性がある。今後、遺伝子治療の臨床研究の実施に結びつけたい。
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