研究概要 |
ヒト臍帯血におけるCD34陽性細胞の定量。成人末梢血中細胞数との比較。Flow cytomery法を用い、臍帯血および成人末梢血におけるCD34陽性細胞の定量を行った。この結果、臍帯血は成人末梢血の約10倍量のCD34陽性細胞を有することが明らかとなった。 臍帯血からのCD34陽性細胞の単離と内皮前駆細胞への分化誘導。臍帯血より単核球を比重遠心分離法を用いて単離し、抗体ビーズ法を用いCD34陽性単核細胞を分離した。CD34陽性細胞に蛍光色素ラベルを行い、単核球と共培養を行なったところ、CD34陽性細胞から主に内皮前駆細胞が現われた。 細胞免疫学的な内皮前駆細胞の同定(表面抗源の発現様式から)。内皮前駆細胞のみに特異的な細胞表面マーカーは明らかにされていないが、表面抗源によってその分化段階ごとの同定が試みられている。内皮前駆細胞は少なくともF1k-1/KDR,VE-cadherin,CD34,CD31などの細胞表面マーカーの発現を有した。 内皮前駆細胞は、eNOSを保有し、VEGFに反応してNOを産生した。また、acetyl-LDLの取り込み能を有した。興味深いことに、内皮前駆細胞自身がVEGFを産生することが明らかとなり、VEGF-KDRのオートクライン機構が存在する可能性が示唆された。 臍帯血由来内皮前駆細胞の機能評価(in vitro)。臍帯血から得られた内皮前駆細胞が、in vitroにおいて、血管新生反応に関与するか否かを検討する。3次元matrix gel培養系において、血管内皮細胞はnetwork formationを引き起こすが、内皮前駆細胞はこれらのnetwork細胞に組み込まれた。さらに、臍帯血由来内皮前駆細胞をin vivoにおいて移植すると、毛細血管網に組み込まれ、虚血部の血管新生と血流回復を有意に促した。 以上より、臍帯血由来内皮前駆細胞の移植は、虚血部の血管新生あるいは血管再生療法に有用な手段であると思われた。
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