研究概要 |
常染色体劣性葉状魚鱗癬(Lamellar ichthosis, LI)の一部の家系に周辺帯(CE)形成異常を伴うトランスグルタミナーゼ1(TGase 1)の変異が検出されている.これまで,TGase 1ノックアウトマウス(TGase 1^<-/->)皮膚を用いて,TGase 1はCEの産生と角質細胞間脂質の統合性維持に必須であることを明らかにしてきた.TGase 1^<-/->は皮膚バリア機能の破綻を示し魚鱗癬を発症する以前に致死的であり,魚鱗癬の形成機構をより適切なモデルシステムで解析する必要性に鑑み,LI家系で見いだされている点突然変異をもつ遺伝子組み換えマウスの作製を計画し,本年度はES細胞における標的遺伝子組み換えを実施した.実験方法としては,LI家系で報告されているArg^<142>→Cysの点突然変異をもつ遺伝子変異マウスを作製するために,マウスTGase 1 exon 3に当該変異をもち,lox-PをNeo遺伝子の両側に配したターゲティングベクターを構築し,ES細胞に導入した.G418で選択ののち,組み換え体をスクリーニング後,最終的に,上記の変異を有するヘテロ変異ES細胞をクローニングすることに成功した.本研究の次のステップとしてこのES細胞を用いてキメラマウスを作製し,`さらにCAG-Creトランスジェニックマウス,およびK5-Creマウスと交配して,マーカーであるNeo遺伝子を除き,最終的にヒト型のLIのモデルを完成させ,さらに,現有のTGase 1^<+/->と交配して点突然変異と欠損変異を併せ持つマウスを作製し,これら複数のモデルマウスについて,表現型の違い,魚鱗癬の重症度など,臨床的および形態的解析により,今後新しい研究の展開と新規治療法の開発に役立つものと期待される.
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