研究概要 |
本研究の遂行により以下の成果を得た。 (1)終末糖化物質(以下AGEと略す)が、glucose以外の少なくとも5種類の還元糖から形成されることを明らかにした。これらの事実は生体内で形成されるAGEは単一でなく、異なる経路から生成され、複数の受容体がそれらの認識に関与している可能性を示唆した。この研究成績はMol Med2000,6:114-125に報告した。 (2)さらに、各種還元糖由来のAGEを胎児ラット大脳皮質より初代培養して得た神経細胞に添加したところ、いずれの場合にも暴露されたAGE濃度依存的に神経細胞死が誘導された。とくにglyceraldehyde由来のAGE(以下、AGE2とする)で顕著な神経細胞毒性が認められ、核クロマチンの凝縮など形態学的にアポトーシスの所見が認められた。これらの作用はAGE2に対する特異的な抗体の前処置で完全に中和された。この研究成績はJNeuropathol Exp Neurol,2000,59:1094-1105に報告した。 (3)健常者ならびに糖尿病性腎不全透析患者血清中のAGEを解析したところ、各種AGEを含む分子量の異なる3つの画分が検出された。それぞれのAGE画分を含む患者血清を神経細胞に添加したところ、細胞障害作用が再現され、これらの作用もAGE2に対する抗体の前処置で完全に中和された。以上より、生体内には各種還元糖に由来するAGEが存在し、糖尿病性腎不全透析患者でそれらが増加することが明らかとなった。生体内においては各種AGEの中でもglyceraldehyde由来のAGE2が特異的に神経細胞障害を引き起こし、アルツハイマー病の発症、進展に関与することが示唆された。この研究成績はCurr Mol Med(印刷中)に報告した。
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