三次元生体神経伝達機能標準脳図譜の作成と合理的向精神薬治療法開発への応用

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11557070
• 研究機関: 東京医科歯科大学
• 研究代表者: 大久保 善朗 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (20213663)
• 研究分担者: 松島 英介 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助教授 (50242186)
• キーワード: 向精神薬 / 精神分裂病 / PET / MRI / ドーパミン

研究概要

今年度は以下の研究およびその研究成果の発表を行った。
1.精神分裂病患者の線条体D2受容体の測定:未服薬分裂病男性患者を11例と年齢が一致した健康男性18例を対象に、[11C]FLB457を用いたPET検査を行い、線状体外のD2受容体を調べた。その結果、分裂病群では対照群に比べて、前帯状回において有意なD2受容体結合能の低下を認めた。また、陽性症状得点の高いものほど、前帯状回のD2受容体結合能が低い相関が得られた。2.未服薬分裂病男性患者20例と年齢が一致した健康男性20例を対象にしMRIを用いて小脳の形態を詳細に調べた。MRIは、1.5-T装置を用い、2mm幅で連続して全脳を覆うT1強調画像を撮影し、小脳を細分化して各部の容積を測定、比較検討した。その結果、大脳・両側小脳半球・両側小脳灰白質・両側小脳白質には群間差を認めなかったが、小脳虫部体積は分裂病群で有意に小さかった。3.分裂病患者の10年間にわたる脳の形態学的変化を比較検討した。対象は分裂病患者17例で、正常対照として健康ボランティア17例を同様の方法で検査した。その結果、脳実質については分裂病群においてのみ10年の経過で有意に減少していた。側脳室については、両群において有意な拡大が認められたが、変化率は分裂病群で有意に大きかった。4.抗精神病薬risperidone単剤治療中の7例の患者で、[11C]FLB457を用いて、帯状回、側頭葉、海馬、扁桃体の辺縁系D2受容体占有率を調べた。その結果、線条体D2受容体占有率は従来、haloperidolなどで報告されている値とほぼ同一で、受容体占有の辺縁系選択性は確認できなかった。このような結果は、抗精神病薬による受容体占有の脳部位特異性を否定するもので、racloprideによる線条体D2受容体の測定することによって、受容体占有率の指標とすることが可能なことを示唆する。

研究成果

• [文献書誌] Suhara,T.,Okubo Y.,Yasuno F. et al.: "Decreased dopamine D2 receptor binding in the anterior cingulate cortex in schizophrenia."Arch Gen Psychiatry. (in press). (2001)
• [文献書誌] Ichimiya,T.,Okubo Y.,Suhara T.,Sudo Y.: "Reduced Volume of the Cerebellar Vermis inNeuroleptic -Naive Schizophrenia."Biological Psychiatry. 49. 20-27 (2001)
• [文献書誌] Saijo,T.,Abe T.,Someya Y.,Sassa T.,Okubo Y. et al.: "Ten year progressive ventricular enlargement in schizophrenia : An MRI morphometrical study."Psychiatry and Clinical Neuroscience. 55. 41-47 (2001)
• [文献書誌] Yasuno,F.,Suhara T.,Okubo Y.,Sudo Y.,Inoue M., et al.: "Dose relationship of limbic-cortical D2-dopamine receptor occupancy with risperidone."Psychopharmacology. 154. 112-114 (2001)
• [文献書誌] Yasuno,Y.,Suhara T.,Sudo Y.,Yamamoto M.,Inoue M.,Okubo Y.,: "Relation among dopamine D2 receptor binding, obesity and personality in normal human subjects."Neuroscience Letters. 300. 59-61 (2001)
• [文献書誌] Okubo,Y.,Suhara T.,Suzuki K. et al.: "Serotonin 5-HT2 receptors in schizophrenic patients studied by positron emission tomography."Life Sciences. 66. 2455-2464 (2000)
• [文献書誌] Kurumaji,A.,Okubo,Y.: "Neurotrsnamitter receptors in actions of antipsychotic medications."CRC Press. 65-78 (2000)
• [文献書誌] Suhara,T.,Okubo Y.,Sudo Y.,Tanada S: "PET research in pathophysiology and treatment of psychiatric illness."Positron Emission Tomography in the Millennium. 33-40 (2000)