研究概要 |
様々な治療困難な感染症において、病巣に存在するマクロファージは、病態を構成する、陰の主役ともいえる。HIV感染症、HTLV-1感染症の代表的疾患であるATL、結核の遷延化におけるマクロファージの果たす役割は大きい。ここではそれらの病態の根本的な改善を目的としてマクロファージにとまた疾患を構成する種々の細胞にレトロウィルスベクターを用いて遺伝子導入効率を比較検討してその機能の変換への基礎的データとした。HIV感染者に肺高血圧症が生ずるが、ここでは肺血管平滑筋細胞由来細胞株PASMCとCD4-CD8-のHTLV-1感染T細胞株、43Tiと末梢血から分離した単球をGM-CSFを含むMEDIUMで5日間培養して得たマクロファージへの遺伝子導入を行った。まず、Lusiferase遺伝子導入レポーター遺伝子を使用し、X4,R5などの様々な指向性を有した偽ウィルスを用い感染実験を行った。HIVのX4,R5遺伝子発現偽ウィルスは通常使用しているCD4・補受容体発現U87細胞には感染するが、PASMCには感染しなかった。そこで、VSV-Gを用いたレンチウィルスベクターによる感染性を検討した。LuciferaseをマーカーとしたVSV-Glucによる感染系では、HPASMCにも補受容体発現U87細胞にも同様に効率よい感染がみられた。しかし43Tiには感染効率は低くまたマクロファージでのルシフェラーゼ活性も非常に低かった。これらの事実をGFPを使用したレポーター遺伝子でも確認すると、PASMCにはウィルス量に依存して、蛍光陽性組胞が増加することが、FACS解析及び倒立蛍光顕微鏡を用いても明らかにされた。43Ti細胞においては、培養18日目に10%程度の陽性細胞の出現をみた。しかし、マクロファージの蛍光陽性細胞は低く本細胞への遺伝子導入には特別の工夫が必要であることが明らかになった。
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