研究概要 |
ATL,AIDS,結核などの難治性感染症患者に於いて、マクロファージは病態を形成する陰の主役である。昨年度はレトロウイルスベクターを用いて、マクロファージを含む種々の標的細胞への遺伝子導入効率を検討した。肺血管平滑筋由来細胞株に比較するとマクロファージへの遺伝子導入効率は極めて低く、導入の効率を上げる必然性が生じた。HIVが融合する際に最終的に標的細胞との融合を担うのはgp41である。gp41は融合の直前にN端とC端のアルファヘリックス領域がアンチパラレルコイルーコイル構造を形成する。これらの構造の出現が感染において必須であるか、あるいはこれらの構造を認識する抗体を感染者が産生できるか否かを検討した。感染者由来の種々のモノクロナル抗体の中で98.6抗体は二つのペプチドを会合した際に生ずるエピトープを認識することが明らかとなった。これらの事実は感染者の血清中に融合に必須な構造を認識し、感染を阻止する抗体がある事を示唆している。我々はいくつかのモノクロナル抗体の中和活性を続いて検討したが、非常に特殊な抗体のみが構造形成を阻止し、また感染を中和することが明らかになった。そしてその阻止能はマクロファージに感染をするウイルスに対しては弱かった。 またX4ウイルスとR5ウイルスに対するgp41由来ペプチドの感染阻止能を検討すると、それらのペプチドの融合阻止能力はR5に対してより高濃度のペプチドが必要であることが明らかになった。一般的にマクロファージに感染する場合にはウイルスの増殖は遅いことが指摘されている。それらに相関する事象として、マクロファージへの感染を阻止する場合はより多くのインヒビターが必要であることが明らかになった。感染機構の解明により選択的な標的細胞への遺伝子導入が可能と思われる。
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