ATL、AIDS、結核などの難治性感染症患者に於いて、マクロファージは病態を形成する陰の主役である。昨年度はレトロウイルスベクターの感染効率を上げるために、gp41の構造と機能をモノクロナル抗体とペプチドを用いて行った。本年度は共同研究にてgp41の細胞膜部分の機能を明らかにし細胞外領域の立体構造変化に細胞内領域が関与することを明らかにした。今年度はgp120由来の第3番目の可変領域であるV3ループの機能を合成ペプチドを用いて特にT細胞株特異的ウイルス(X4)とマクロファージ特異的ウイルス(R5)を用いて解析した。Biotin化したV3 loop peptideを使用し、細胞膜への結合を解析した。X4ウイルスのV3 loop peptideは細胞膜に結合したがR5ウイルスのV3 loopは結合しなかった。X4由来V3 loopの細胞膜への結合がそれ自身により増加した。またX4とR5のV3 loopの感染に及ぼす影響をPseudotypeを用い、標的細胞をU87.CD4.Co-Rにして観察すると由来ウイルス特異的な感染の促進がみられた。これらからV3 loopの感染促進作用には2つの機構がある。第一はX4に見られた、V3 loopへの結合がPositive cooperationを生じ感染が促進する場合。第二はR5に見られたように恐らくEnvelopeに作用して、それを活性化する。これらの結果はHIVの感染を促進できる可能性を示しマクロファージ特異的なベクターの開発に有用である。
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