研究概要 |
インドキシル硫酸の腎不全進行促進作用の分子機序を明らかにする目的で、5/6腎摘ラットを用い腎臓におけるtransforming growth factor(TGF)-β1、tissue inhibitor of metalloprotease(TIMP)-1,pro-α1(I)collagenの遺伝子発現に対するインドキシル硫酸投与の影響を検討した。腎亜全摘5週後よりインドキシル硫酸を5週間投与した。インドキシル硫酸投与により、血清クレアチニンの有意の増加およびクレアチニンクリアランスの有意の低下が認められ、また糸球体硬化係数の有意の増加と尿細管拡大がより顕著に認められた。5/6腎摘ラットでは、正常ラットに比較して腎皮質におけるTGF-β1、TIMP-1,pro-α1(I) collagenのmRNAの著明な増加が認められたが、インドキシル硫酸投与ラットではさらにこれらのmRNAの有意の増加が認められた。インドキシル硫酸の腎毒性のターゲット部位を明らかにするために、モノクローナル抗インドキシル硫酸抗体を作成し、腎組織の免疫染色を行った。インドキシル硫酸抗体により、正常に比較して腎不全ラットでは尿細管上皮細胞、特に拡張した近位尿細管細胞に陽性所見が得られた。インドキシル硫酸投与腎不全ラットではより顕著に拡張した近位尿細管上皮細胞が陽性であった。このことから、インドキシル硫酸の腎毒性のターゲット部位は近位尿細管上皮細胞であることが証明された。インドキシル硫酸は血中ではアルブミンと結合しており腎臓では近位尿細管上皮細胞から分泌されて尿中に排泄されている。腎不全では血中濃度が増加し、近位尿細管細胞への過剰負荷が起こり、近位尿細管細胞の障害をきたし、腎障害の進展を促進すると考えられる。
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