インドキシル硫酸はアルブミン結合性のため、尿中排泄は主に近位尿細管からの分泌によると考えられる。近位尿細管の基底側膜にはパラアミノ馬尿酸(PAH)などの有機酸を血中から近位尿細管細胞内に取り込む有機アニオントランスポーター(OAT)が存在する。OAT1、OAT2、OAT3のクローニングが報告されており、主にOAT1は腎臓、OAT2は肝臓、OAT3は腎臓と脳脈絡膜において発現がみられる。インドキシル硫酸はOAT1によるPAH取り込みを阻害し、またOAT3によるエストロン硫酸の取り込みを用量依存性に阻害した。従って、インドキシル硫酸は、近位尿細管基底側膜に存在するOAT1、OAT3を介して血中から近位尿細管細胞内に取り込まれていると考えられる。5/6腎摘腎不全ラットの腎皮質では、正常ラットに比較してOAT1の発現が減少しており、一方OAT3の発現は増加していた。さらにインドキシル硫酸投与腎不全ラットでは非投与腎不全ラットに比較してOAT1の発現がより減少しており、OAT3の発現がより増加していた。OAT-1は正常の近位尿細管細胞に発現しており、OAT3は主に拡張した近位尿細管細胞に発現していた。抗インドキシル硫酸抗体と抗OAT3抗体を用いた免疫染色によりインドキシル硫酸とOAT-3の局在部位は一致していた。以上の結果から、インドキシル硫酸は正常では主にOAT1により近位尿細管細胞に取り込まれるが、腎不全では主にOAT3により取り込まれる。慢性腎不全では血清インドキシル硫酸濃度が高くなり、その結果OAT3を発現した近位尿細管細胞内でインドキシル硫酸が高濃度となり尿細管細胞障害を来すと考えられる。
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