研究概要 |
研究代表者らはSREBPのアイソザイムのうちSREBP2がコレステロール調節に基本的に関与していることを証明してきた.またSREBP2切断部位のアミノ酸配列を基にペプチド性消光性基質を設計し,感度の高いアッセイ系を構築した.これを用いて小胞体膜より切断酵素の精製を行った.本年度はSCAP,HMG-CoA還元酵素などコレステロール感受性部位(sterol sensing domain;SSD)を持つ蛋白質のゲノム構造を調べ,エクソンシャッフリングによる分子進化の可能性を見出した.また切断酵素の生化学的性質を調べるため,バキュロ発現系を用いコレステロール調節に関与する膜蛋白質を発現させるあらたな手法を見出した. 一回膜貫通型Ca^<++>依存性セリン酵素であるS1Pが米国のグループによりSREBP2のプロセッシング酵素として報告されたため,ヒトS1Pの活性部位を含んだ可溶性領域をCHO細胞を用いて発現精製した標品を用いて,上記アッセイを行ったが,明瞭な活性は認められなかった.さらにヒトSREBP2,SCAP,S1Pの全長をバキュロウイルスの発現系を用いて昆虫細胞Sf9に発現させる系を構築した.この際,培養上清中への当該蛋白質の大量発現を見出し,スクロース密度勾配遠心法やバキュロウイルスエンベロープ蛋白質(gp64)に対するウエスタンブロットなどにより,ウイルスエンベロープへの膜蛋白質の発現を示唆する知見を得た.S1P全長をウイルスに発現させた系ではわずかながらCa^<++>依存性の上記ペプチド性基質を切断する活性を検出したが,さらに検討中である.この発現系を用いSREBP2全長にたいする切断活性や共感染によるSCAPの効果など様々な膜酵素への応用が期待される.
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