研究概要 |
我々は血管新生を抑制することから癌治療に取りかかってきた.そこで,血管内皮細胞のHUVECの遊走能に着目し,この運動を制御する因子を見つけだし,これをAngiogenesis Inhibiting Protein(AIP)と名付けた.一時このwhole cDNAと考えられる2571個からなるcDNAをクローニングすることができた.しかしながら,これをトランスフェクションしてみても,一部の細胞でしか血管新生制御を行うことが不可能であった.また,スキッドマウスを用いたin vivoの実験においても,このAIPのwhole cDNAをトランスフェクションした細胞を移植してみたが,コントロール細胞と腫瘍の増殖,及び腫瘍への血管新生阻害という点で,有意な差は得られなかった.また,アデノウイルスを用いて,ヌードマウス移植腫瘍自身にAIPを発現させてみたが,腫瘍血管新生を阻害することは出来なかった.これらのことから、AIPが糖蛋白質複合体となって初めて、その生理的作用を獲得することが考えられた。つまり、この蛋白構造に修飾された糖鎖構造が、このような生理的現象を示している可能性が示唆され、抗体アフィニティカラムでAIPを精製し蛋白質部分と糖鎖部分をそれぞれ分離した。更に、この糖鎖部分に対する抗体を作製するとともに、NMRを用いてこの糖鎖構造を解析している。その結果、末端糖にシアル酸が付いており、この部に活性を見出し、詳細な構造を検討中である。しかしながら、もう一つの可能性としては、ラット角膜を用いた正常血管内皮細胞の新生阻止を行えるので、正常血管新生と腫瘍内血管内皮細胞の新生阻止とは、そのプロセスが異なることも示唆された。引き続きこれらの問題を検討していく予定である。
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