研究概要 |
肝臓の機能は、解毒抱合・胆汁分泌・蛋白合成など極めて多機能であるが、その解毒抱合・胆汁泌に絞てみると、一種の分子篩として機能している腎臓とは異なり,肝細胞膜上のトランスポーターが特異的ある種の分子を肝細胞内に取り込み,細胆管側ヘトランスポーターによって排泄される高度複合機能をした細胞である。その機能の詳細は長年不明であったが,近年の分子生物学の進歩により、細胞膜上に在する各種トランスポーターの構造と機能が明らかとなってきた。 研究代表者らは、平成11年度に、ヒト肝臓特異的有機アニオントランスポーター,LST-1のクローニング成功した。さらにこのLST-1のラットのカウンターパートであるrat lst-1(rlst-1)も単離した(Kaky M.et al.Gastroenterology)。平成12年度にはLST-1と相同性を有する肝特異的有機アニオントランスーター,LST-2の単離に成功し報告した(Abe, T et al.Gastroenterology)。 このLST-1を肝臓由来細胞株HepG2に導入したHepG2/LST1細胞株を作成した。細胞よりmRNAを抽出しノーンブロットを施行し、LST-1の発現を確認した。この細胞は培養液中に添加した[3H]taurocholateを対照に比して約5倍取り込んだ。発現蛋白をより増加させるために我々はアデノウイルスベクターをもちいてLST-1およびLST-2を過剰発現させる系の開発を行った。AdLST-1とAdLST-2を作成し、これを培養細胞系感染させることにより、50倍から100倍のtaurocholateの取り込みが観察された。このアデノウイルスを種癌細胞に感染させることにより、抗癌剤MTXの輸送能が高まり抗癌剤MTXの感受性亢進が確認された。この系を用いて、現在更なる検討を進めている。
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