研究概要 |
本研究は患者の肝臓から肝幹様細胞を分離しそれを飛躍的に増加させた後に分化させ、その分化型肝細胞を体内に再移植して人工肝塊を形成させ、重症肝不全を治療することを目的にしている。実験では少量の肝臓のサンプルから肝の幹様細胞を分離し、それを培養し、さちに増殖させ、次ぎにそれをin vitroで分化させ高度の分化能を持った細胞にした上で、90%肝切除後のラット体内に自家移植しその機能を検討している。これまでに、灌流液の工夫によりほぼ死細胞が5%以内というviableな肝細胞の採取方法とともに、その中から肝幹様細胞を効率的に採取する方法を確立した。また、これらの細胞を生体内に移植し厚さ数mm、長さ10mmほどのsinusoidや微小胆管様の構造に囲まれた肝小葉類似構造を持つ肝細胞塊を作成することに成功している。 また、これに関連する実験としてTGF-βとActivintruncated type II TGF-βreceptor遺伝子とtruncated type II activin receptor遺伝子並びにlacZ遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターをそれぞれin vivoでラットの門脈内にone shotでinjectionし,肝でのDNA合成とTGF-βとActivinの発現を検討した。その結果、コントロールのlacZ遺伝子投与群に比べて両群で有意にDNA合成の亢進が認められ、また、肝細胞内ではTGF-βとActivinの免疫染色性が有意に増加した。このことからtonicalyに肝細胞の増殖を抑制しているTGF-βとActivinの作用部位をブロックすると肝細胞の増殖が惹起されることが明らかになった(Hepatology 2001;34:918-925)。 現在、この基礎実験に基づき、lacZ遺伝子を導入してマーカーとすると共に、TGF-βとActivinのreceptorの変異遺伝子を肝幹様細胞に導入し、in vitroでの増殖分化をはかった上で生体内に移植し、「肝幹様細胞を基礎にした分化型肝細胞」からなる機熊的人工肝塊を耳成させ、重症肝不全に対する肝細胞移植補助療法の完成をめざしている。
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