研究概要 |
体重約20kgの雌豚を用い、心停止30分、60分後にグラフト肝を摘出し同所性に肝移植を施行した。ドナー手術において開腹後直ちにmicrodialysis法のサンプル抽出用のプローベを挿入し、塩化カリウム投与によって心停止させ、30分、60分後に肝を灌流してグラフトを摘出した。心停止前より挿入したサンプル抽出用プローベよりサンプルを15分毎に抽出し、肝組織プリン代謝物(adenosine,inosine,hypoxanthine,xanthine)濃度をHPLC機器にて測定した。(1)心停止30分群(2)心停止60分群の2群で肝組織プリン代謝物濃度を比較すると、(2)群は(1)群に比べて有意に肝組織プリン代謝物濃度が上昇した。また、同群間においても、プリン代謝物濃度高値例は移植後肝機能が不良となる傾向が見られた。血清生化学および組織学的考察でも、これに追従する結果を得た。心臓死ドナーからの肝移植では長時間の温阻血に暴露されることに伴うと考えられる高率なprimary nonfunctionが発生するが、グラフト肝移植前評価法は依然として確立していない。microdialysis法を応用することで心臓死肝移植における心臓死グラフト肝移植前評価の可能性が示唆された。現在、さらに実際の臨床条件に近ずけるべく、心停止前に低血圧状態を付加した設定で実験を継続中である。
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