研究は幹細胞が顕在化(活性化)すると考えられる心不全状態モデル動物の作成、ならびにその評価から介しした。まず、圧負荷心不全モデルにおける心筋細胞増殖変化の検討として、体重400gのSD系ラットに腹部大動脈縮窄処置を加え圧負荷心不全モデルを作成し、3週間後に犠牲死させ、体重当たりの心筋重量の増大、心筋細胞の肥大を確認した。次に細胞周期の検討として、Langendorf装置を用い、コラーゲナーゼ潅流法にて心筋細胞の分離を行い、細胞浮遊液をFlowcytometryにかけM期細胞の検出を行った。また、組織学的検討として圧負荷3週間後における心筋組織でのapoptosis細胞の検出を行った。apoptosis細胞の増加は有意であったが、M期細胞の有意な増加は認められなかった。 そこで、心筋細胞培養モデルにおいて過剰心負荷状態を作成し、かかる状況下での培養細胞遺伝子発現変化を検討した。伸展刺激はシリコンラバー膜上に細胞を播種し、接着させた上で60/minの速度で周期的にシリコンラバー膜を伸展させた。生じた遺伝子変化の中で細胞周期関連遺伝子の変化についてRealtime PCR法を用い変化量に量的有意変化の有無を検討したが、有意なものは認められなかった。心筋内に幹細胞が存在する可能性を現時点で否定するものではないが、骨髄から流入する間葉系細胞の分裂変化が、末期心不全状態における心筋内細胞分裂所見の源であるとも考えられた。
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