研究概要 |
当教室では,ドナー心の長時間保存をめざし,群馬大学式臓器潅流装置を開発した.現在までに,浸漬および潅流液にUW液を用いた12時間保存・移植実験でその有用性を確認している.IL-1β,及びTNF-α産生阻害剤FR167653を本装置を用いて保存中に持続投与することにより冷保存中の心筋保護効果が同所性移植実験を通して確認された.至適潅流液の検討ではCelsior液とUW液とを比較し,Celsior液が保存・移植成績で優れていた.酸素化Celsior液による本装置を用いた心保存・移植実験では24時間心保存の可能性が示唆された.試作された装置に対し,更なる軽量化,無菌操作に対応すべく気密性の向上などの改良を行った.実際の遠隔地からのドナー心搬送を想定したシュミレーション実験を行った.前橋-東京間を自動車でドナー心を往復搬送し,問題のないことを確かめた上で鹿児島大学-群馬大学間を自動車,民間航空機を利用して搬送した.移動中,潅流保存は安全かつ安定して行われた.搬送後に同所性移植を行った.総虚血時間は9時間40分で,移植後の循環動態は安定しており,本装置の長距離搬送における有用性が実証された.今後は某大手企業の協力を得て,製品化へ向けた装置の改良を行い,更なる長距離,長時間の搬送実験,又,腎臓をはじめとする他臓器の潅流保存実験を計画している.
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