研究概要 |
教室では、ドナー心の長時間保存を目指し、単純浸漬法と冠灌流法を組み合わせた群馬大学式灌流保存装置を開発した。University of Wisconsin(UW)液を用いた12時間保存心の同所性移植モデルでの単純浸漬法との比較では、本装置の長時間心保存における有効性が確認された。また適切な灌流液の検討として、UW液とCelsior液の比較を12時間保存心の同所性移植モデルで行い、保存中の心筋内高エネルギーリン酸、移植後心機能はCelsior群が有意に良好であった。さらに、灌流液として酸素化Celsior液を用いた24時間保存心の同所性移植実験では、保存中の高エネルギーリン酸を24時間後においても良好に保ち、移植後の心機能も良好であった。 心停止ドナーからの心移植において、graft viabilityを低下させる要因として心筋内エネルギーの枯渇、細胞骨格の破綻、血管機能の低下、代謝物の蓄積、各種mediatorの産生などが挙げられる、脱血死による心停止後、30分の温阻血に4時間の冷保存を加える心停止ドナーモデルを作製し、本装置を用いた保存法による心停止ドナーからの臓器獲得の可能性を検討した。本装置を用いて温阻血後のgraftをCelsior液により持続冠灌流保存することで、保存中の蓄積産物のwashoutによる効果を期待した。しかし,灌流保存後,心筋浮腫が予想以上に強くなり、同所性移植後に体外循環からの離脱が困難であった。今後、保存中の組織浮腫を防ぐため、灌流液や灌流量を含めた条件設定の再検討が必要であり、また、再灌流傷害を軽減する薬剤の使用も検討中である。
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