免疫抑制剤とその誘導体による脊髄損傷修復の基礎的研究

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11557106
• 研究機関: 岐阜薬科大学
• 研究代表者: 古川 昭栄 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (90159129)
• 研究分担者: 古川 美子 愛知文教女子短期大学, 教授 (20219108) ; 新田 淳美 岐阜薬科大学, 薬学部, 助手 (20275093) ; 野元 裕 岐阜薬科大学, 薬学部, 助教授 (80164747)
• キーワード: 脊髄損傷 / イムノフィリン / サイクロスポリンA / グリア細胞株由来神経栄養因子 / ラット / 遺伝子導入 / 酵素免疫測定法 / 脳由来神経栄養因子

研究概要

交通事故等によって脊髄にダメージを受けた場合は4肢の全てまたは一部の機能が失われ、患者の残された人生のQuality of Lifeは著しく低下する。我々医学・薬学の研究者にとっては、ただ生きながらさせるだけでなく質の高い人生を送ってもらえるような治療法を提供することが責務である。脳由来神経栄養因子やグリア株由来神経栄養因子の産生を誘導する物質が脊髄損傷の治療に有効でないかと考え我々は長年にわたって研究をおこなってきている。特に、免疫抑制剤の結合部位であるイムノフィリンが脳神経細胞をダメージから救うことが報告され、我々は、その際、神経栄養因子の産生が関与しているのではないかと考え本研究をおこなった。
昨年度までに、サイクロスポリンやタクロリムスのような免疫抑制薬が培養神経細胞や培養アストロサイトにおいてグリア株由来神経栄養因子や脳由来神経栄養因子の産生を誘導することを明らかとしている。本年度は脊髄を損傷したモデルラットにこれらの免疫抑制剤、ずなわちイムノフィンリンリガンドを投与し経日的に機能回復について検討した。
脊髄損傷直後からサイクロスポリンやタクロリムスを投与すると、脊髄を損傷したラットの歩行能力が著しく回復した。またこのときの脊髄や脳での神経栄養因子含量を測定したところ、損傷によって増加していたグリア細胞株由来神経栄養因子の増加をイムノフィリンリガンドは抑制していた。
しかし、免疫抑制剤は免疫抑制効果があるため、中枢編変性疾患の治療に用いるには困難である。そこで次年度は、免疫抑制効果のないイムノフィリンリガンドの開発を目指す予定である。

研究成果

• [文献書誌] Fukuta et al.,: "Difference in toxicity of amyloid b peptide with aging in relatuin to nerve growth factor content in rat brain"Journal of Neuronal Transsmission . In press. (2001)
• [文献書誌] Ikemoto et al.,: "Dietary n-3 fatty acid deficiency decreases nerve growth factor content in rat hippocampus "Neuroscience Letters. 285. 99-102 (2000)
• [文献書誌] 新田淳美と古川昭栄: "神経栄養因子(特集;アルツハイマー病と異常蛋白沈着による痴呆症をめぐる最近の話題)"Pharma Medica. 18. 87-93 (2000)
• [文献書誌] Kawakami et al.,: "Increase in neurotrophin-3 expression followed by Purkinje cell degeneration in the adult rat cere"Journal of Neuroscience Research. 62. 668-674 (2000)
• [文献書誌] Fukumitsu et al.,: "Aberrant expression of neurotrophic factors in the ventricular progenitor cells of infant congenitally hydrocephalic rats."Childs Nervous System. 16. 516-521 (2000)
• [文献書誌] Nomoto et al.,: "Balance of two secretion pathway of nerve growth factor in PC12 cells changed during the progression of their differentiation, with a decrease in in constitutive secretion in more differentiated cells"Journal of Neuroscience Research . 59. 634-642 (2000)