研究概要 |
本研究においては、多大な経費と労力を要する動物実験の代替となるBBBモデル系の実用化を図る、すなわち、新規の中枢神経薬の探索範囲を拡大しさらに現在使用されている薬剤の効果評価にも利用できる簡便な「スクリーニング系」を確立することに目的に研究を進めた。脳毛細血管内皮細胞は、初代培養が難しく、大量に入手することは困難を極める。そこで、脳毛細血管内皮細胞を安定かつ大量に供給するために、ウシ脳毛細血管内皮細胞にSV40 large T抗原遺伝子を導入し不死化したtBBEC117細胞株を樹立した。この不死化脳毛細血管内皮細胞をダブルチャンバー培養器の内側チャンバーに培養し、外側チャンバーにアストロサイトを離して共培養することにより、不死化脳毛細血管細胞株でもBBB特異的機能発現(密着帯、mdr、Glut-1、透過性の低下など)があることを確認した[Sobue,K. et al.Neurosci.Res.35:155-164,1999]。このことはアストロサイトが何らかの液性因子を分泌し脳毛細血管細胞にBBB特異的形質の発現を誘導している可能性を示している。このように、アストロサイトからの液性因子によりBBB特異的形質が誘導されことより、BBBモデルにおいて再現性良く実験を進めるために、アストロサイトの安定供給を計る必要も出てきた。そこで、申請者らは、ラット大脳皮質から初代培養したアストロサイトにSV40 large T抗原遺伝子を導入し不死化した細胞株を樹立した。ACT-57と名付けた細胞株は、アストロサイトのマーカータンパクであるGFAP(グリア線維性酸性蛋白)を発現しており、さらにNGF(神経成長因子)を高発現していることが判明した[Morikawa,M. et al.Neurosci.Res.39:205-212,2001]。今後、これら、不死化毛細血管内皮細胞及び不死化アストロサイトを使用し研究を進める予定である。
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