研究概要 |
本研究は脊髄誘発磁界計測用の超伝導量子干渉素子(SQUID;superconducting quantum interference device)磁束計を開発し,脊髄伝導路の三次元的な解析を行うことを目的としている。平成11,12年度の研究として以下の如く,SQUID磁束計と磁気シールド装置の設計,制作,設置を行い,脊髄誘発磁界の計測を行った。 1)脊髄誘発磁界計測用SQUIDコイルの設計 脊髄誘発磁界は信号強度が非常に小さく,かつ脊髄からの磁界成分は体表に対して水平方向に発生すると予測され,SQUID検出コイルの高感度化,形状の最適化を計る必要があった。脊髄の解剖学的知見に基づき,1チャンネル計測用SQUIDコイルを設計した。SQUIDの検出コイルは外来磁気雑音を相殺するため2つのコイルを逆接続したグラディオメーター構造とし,脊髄磁界計測に適したコイル巻数とコイル間距離を設計し,検出コイルの高感度化を図った。SQUIDコイルの製作は米国Tristan社にて行った。 2)小型磁気シールド装置の開発・設置 脊髄誘発磁界計測時の外部磁気雑音遮断を目的に,小型磁気シールド装置を製作・設置した。この装置内で,脊髄の任意の複数箇所で誘発磁界計測を可能とするために,被検体を自由に移動できる機能を持たせた。 3)SQUID磁束計の設置 非磁性プラスチック製で,前後左右に可動範囲を有するガントリーを製作し,SQUIDコイルを固定した。ガントリー下方に実験動物固定用の改良型動物脳定位固定装置を設置した。これらの装置を小型磁気シールド装置内に設置した。 4)脊髄誘発磁界の計測 実験動物として成猫を用いた。ケタミン筋注・静脈麻酔後,人工呼吸下に麻酔を維持し,改良型脳固定装置に実験動物を固定し,小型磁気シールド内に装置した。Nicolet Viking IVを用いて後肢坐骨神経を電気刺激し,脊髄腰膨大部にて誘発磁界を導出した。約500回の加算平均により,潜時が約2msの二峰性波形を記録した。これは馬尾神経・脊髄を上行する信号により生じた磁界と考えられた。
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