研究課題
細胞内に有用蛋白を発現させる、あるいは取り込む方法としては、遺伝子導入、または細胞外空間に蛋白を投与してendocytosis、phagocytosisによって細胞に取り込ませる方法などが考えられる。最近、herpes simplex virus I由来のVP22蛋白は特異な性質を持つ事が報告された。VP22蛋白は殆どすべての細胞種で細胞外空間から細胞内に取り込まれるとされる。また、そのカルボキシ末端に他の蛋白を付加しても、共に細胞内に取り込まれる事が報告されている。この取り込みは通常のendocytosis、phagocytosisとは異なる機序によるとされており、その効率も良く、drug de1ivery systemとしての利用が示唆されていた。本研究では本来細胞内で働く有用蛋白とVP22との融合蛋白を作製し、細胞外空間から投与して、細胞内に取り込ませて、その機能を発揮させようと試みた。有用蛋白として、細胞保護作用が報告されている、ストレス蛋白(分子シャペロン)HSP27を用いて、VP22-HSP27キメラ蛋白を作製した。2種類のキメラ蛋白を作製したが、一方は発現はするものの不安定で、細胞内で速やかに分解された。もう一方は、発現し、VP22蛋白によって核に局在が誘導されたと考えられたが、侵襲に対する抵抗性は却って低下した。これは、キメラ蛋白のVP22部分によりHSP27の作用が阻害され、dominant negative変異蛋白として機能したと考えられる。今後は他の有用蛋白とのキメラ蛋白を作製しさらに検討を重ねたい。
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