研究概要 |
本研究の目的は、各腫瘍のVHL病遺伝子の変異に特異的なPCRprimerを作成し、患者末梢血のDNAより2段階のPCR反応を行うことで、腎癌細胞が末梢血に存在する事を証明することである。その結果を腎細胞癌患者の腫瘍マーカーとして利用することを目指している。 腎細胞癌患者29人の摘出腫瘍組織についてVHLgeneのmutationの有無をダイレクトシークエンス法を用いて調べた。そしてmutationのみられた患者においてはmutation specific nested RT-PCR法を用いてその血液サンプルを調べた。その結果、細胞癌患者29人中18人(62.1%)でVHL geneにsomatic mutationが認められた。今回の検討では,その18人中14人にcirculating cancer cellが認められた。末梢血においては,術前に15人中2人(13.3%)に,術後24時間以内に14人中6人(42.9%)に,術後1週間目に14人中3人(21.4%)に,術後1ケ月目に11人中2人(18.2%)に癌細胞が検出された。術中腎静脈血においては,8人中6人(75%)で癌細胞陽性であった。尚,健常コントロール50人では,いずれも癌細胞陰性であった。 この新たな癌細胞検出方法は,高頻度に血中癌組胞を検出できる有用な方法である。術中腎静脈血および術後24時間以内の末梢血に高頻度に癌組胞が検出されたことより,手術操作によって癌細胞が血中にリリ一スされている可能性が示唆された。この方法は,術後のモニタリングや術後補助療法決定において有用と考えられる。今後症例を増やし,また観察期間を延長して検討する必要がある。
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