研究概要 |
1.ヒト組織中のダイオキシン類の検出と子宮内膜症との関連の検討 ヒト脂肪組織中のダイオキシン類の検出を試み、子宮内膜症の重症度の観点から検討した。その結果、全ての脂肪組織中よりダイオキシン類が検出され、脂肪組織中のダイオキシン類濃度は重症例で有意に高い値を示した。子宮内膜症重症例でダイオキシン類汚染の程度が高い可能性が考えられた。更に、ヒト卵胞液中のダイオキシン類濃度の測定を行い、子宮内膜症との関連について検討をおこなったところ、有意差は認められなかったが、内膜症群で高い傾向を示した。今後生活環境などの背景の解析を含めた多数例の検討が必要であると考えられた。 2.子宮内膜症におけるダイオキシン類関連遺伝子の検出と子宮内膜症との関連の検討 子宮内膜症患者と非子宮内膜症患者とではダイオキシンの子宮内膜に対する作用が異なるとする可能性を検討するため、ダイオキシン受容体であるaryl hydrocarbon receptor(AhR)、その受容体の共役因子であるAhR nuclar translocator(Arnt)、ダイオキシンに反応する二つの遺伝子cytochrome P-450 1B1(CYP1B1)と、p62(dok)に関してmRNAのヒト子宮内膜症における発現を解析した。AhR,Arnt,CYP1B1,p62(dok)全ての子宮内膜症における発現を確認する一方、p62(dok)のみ子宮内膜症重症例で高い傾向を認め、ダイオキシンが子宮内膜に影響を及ぼす可能性が示唆された。 3.ビスフェノールAとエストロゲンレセプターαおよびβとの相互作用の検討 ビスフェノールA(BPA)はプラスチックの基材として広く用いられているが、エストロゲンレセプター(ER)に結合しエストロゲン作用に影響する内分泌撹乱物資と考えられている。ERを発現していないHeLa細胞にERα,βのそれぞれの発現ベクターおよびERE(estorgen responsive element)をもったCATレポータープラスミドを遺伝子導入し、実験に用いた。転写活性はERα,βともにBPA 1nMから検出され、用量反応性を認め、BPA 1000nMでE2 10nMとほぼ同等の活性となった。E2 10nMとBPAの各濃度の添加では、ERαの場合のみ、BPA 1000nMで約20%の転写活性の抑制が認められた。BPAはERα,βを介して単独ではエストロゲン作用を示すが、E2共存下ではERのサブタイプにより選択的にantagonist作用を認めた。ERα,βは発現臓器が異なっており、今回の結果から、BPAの内分泌撹乱作用は各臓器により異なる可能性が示唆された。
|