胆道閉鎖症(以下本症)肝組織におけるアポトーシス抑制遺伝子としてのbcl-2の解析を進めている。 第一段階として当施設における胆道閉鎖症症例の手術時肝生検組織を用いてbcl-2遺伝子の発現を解析したところ、正常肝をコントロール群とした検討にて本症肝組織においてはbcl-2遺伝子の発現がコントロール群と比較して低下していることが判明した。ただしbcl-2遺伝子産物であるBcl-2蛋白は生体内において単独では作用せずBcl-2を含むファミリーの遺伝子産物であるBax、Bcl-xL、Bcl-xS、Bad、Hrkなどと二量体を形成してはじめて活性化しホモダイマー、ヘテロダイマーで作用が変化するため現在はそれらのBcl-2ファミリーの解析をおこなっている。 第二段階としてbcl-2ノックアウトマウスを用いた実験モデルの作製も進行中であるが、bcl-2ノックアウトマウスは生存期間が非常に短く充分な肝組織を得られないため実験を進めることが困難となっている。そこで我々は本症に内蔵錯位を合併する例が多いことに注目し、内蔵錯位および胆汁うっ滞を生じることが知られているinv変異マウスを用いた検討を現在進めている。inv変異マウスの肝組織における胆管形態の変化、アポトーシスの局在部位、bcl-2遺伝子などのアポトーシス関連遺伝子の発現について検討を加えることでinv変異マウスにおける胆汁うっ滞の原因を解析を進め、本症の内蔵錯位合併例の原因究明について遺伝子レベルでの解明を鋭意おこなっている。
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