研究概要 |
昨年度に得た歯髄組織由来の遺伝子のうち,創傷治癒時の歯髄組織に強く発現した3.5kbのcDNAのクローニングを継続した。断片的な部分の塩基配列の解析からは,このcDNAは類似の遺伝子はEST AI 763748と相同性を有していることがわかったが,機能は不明なままであり,この遺伝子は新規のものである可能性が高い。この遺伝子の全長を得るべく,ラット肝組織由来のcDNAライブラリーをスクリーニングしたが,最終的には遺伝子全長を得ることには成功していない。そのため,遺伝子増幅法に基づいた5'RACE法によって得たDNA断片のクローニングを行い,全長の塩基配列を得る手前に至っている。今後は,この遺伝子の発現の局在をin situ hybridizationによって明らかにする必要がある。さらに,昨年度に得た他のcDNAについても,クローニングが進行中である。 さらに,発現しているタンパク質も確認した。昨年度には創傷治癒時の歯髄にTGF-β遺伝子が発現していることを明らかにしていた。そこで,免疫染色によってTGF-β蛋白の発現が象牙芽細胞が密集している部分に多いことを示した。さらに,結合組織増殖因子(CTGF)の蛋白も同様な発現パターンを呈していた。このように,発現を検出した遺伝子の最終産物も確認しなければならない。 一方,既知の遺伝子(レポーター遺伝子等)を用いた歯髄細胞への遺伝子導入は,機関内の研究協力者によってβ-ガラクトシダーゼ遺伝子を組み込んだAdeno virus系の発現ベクターを用いて展開した。導入効率はプラスミドベクター系よりも高いようであったが,導入されている部分は歯髄組織の最表層であり,両ベクター間での違いはほとんどなかった。深部への浸透を必要とするのか,あるいは表層でよいのかを考察する必要がある。そのためには導入された細胞種を明白にする必要がある。
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