研究概要 |
欠員補綴の治療オプションとして用いられているインプラントの予後は良好なものが多いが,埋入する骨質が不良な場合には予後は決してよくない。この問題を解決するためには,骨質の客観的診断とそれに基づいたインプラントの選択が重要となる。しかしながら,この分野での科学的根拠はきわめて乏しく,臨床的判断が優先されている。そこでヒトに近いサルを用い,骨質とインプラント周囲に達成されるオッセオインテグレーションとの関係を科学的に把握することにより,骨質に応じた最適形状のインプラントの最適基準を得ることを目的として研究を計画した。 平成11年度には,あらかじめpQCT撮影による骨診断を行った4頭のサル下顎骨ヘスクリュー型インプラントおよびシリンダー型インプラントを埋入,内2頭には埋入3カ月後上部構造装着を行い,3カ月の観察期間終了後動物を屠殺,まずシリンダー型インプラントにおいて周囲骨構造の三次元的構築を行い,以下の結果を得た。 1.任意方向の断面像から,上部構造未装置のインプラントと上部構造を装着したインプラントはともに舌側の皮質骨に沿って埋入されていることが判明した。また,インプラント表面への骨接触状態,骨の広がりなどが明らかとなった。 2.インプラント全周にわたる骨接触率は,上部構造未装着のインプラントが63.4%,上部構造を装着したインプラントが59.9%であった。両者ともに皮質骨に沿った舌側よりも海面骨領域と接する近遠心側の方が低かった。 3.インプラント表面からそれぞれ0〜75,75〜150,150〜225,225〜300μm離れた領域における骨体積率は各領域において,上部構造未装着インプラントが50.6〜63.4%,上部構造を装着したインプラントが49.6〜59.9%であった。
|