研究概要 |
日本は急速に高齢社会になり,高齢者への対応が急務である。高齢者が増えることは,義歯の需要が見込まれ,総義歯装着の増加が見込まれる。高齢者が増加すると,要介護高齢者が増加することが推察される。従って,総義歯装着者における要介護高齢者への対応が重要になってくる。また,高齢者特有の心理を考えた場合,従来の医療モデルでの対応は困難である。 高齢者の特質を理解して治療するためには,従来の医療モデルではなく,新しいモデルが必要である。近年よく耳にする全人的治療もその一つと考えられる。このようなモデルを構築するためには,机上の空論ではなく,実際のデータに基づいた検討が必要である。しかも,横断的なデータよりは縦断的,経年的なデータから検討することが必要である。 高齢者の生活環境は様々である。長い人生を経た結果であるのだから,当然ともいえる。従って,可能な限り均一な生活条件の高齢者を調査対象者とすることが必要である。これらの観点から,入院している高齢者はその生活環境も比較的把握しやすく,種々の検討した結果も妥当性があることが期待される。 本研究においては,単科精神病院の痴呆病棟入院患者の口腔内の実態および義歯装着について調査し、痴呆の程度、目常生活動作能力などの及ぼす影響について検討した。調査対象者は、単科精神病院の痴呆病棟入院患者であり、口腔内状態は、現在歯数、残根歯数、喪失歯数、咬合支持、義歯装着状況、口腔ADL、口蓋粘膜からのカンジダの検出などを調査した。痴呆の程度は、改訂長谷川式簡易知能評価スケールで、日常生活動作能力はN式ADL(5項目の評価で行う)により評価した。 現在も引き続き検討中であるが、現在までの生活環境(口腔内の清掃も含めて)などが口腔内状態に影響を及ぼしているのではないかと推察される。
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