研究概要 |
本研究の目的は,シェーグレン症候群に類似した唾液腺炎を含めた膠原病疾患群を発症するマウスの背景遺伝子群を再構成したマウスを作出し,そのマウスの唾液腺炎の疾患感受性遺伝子を同定し,シェーグレン症候群の疾患感受性遺伝子の遺伝子座を同定することである.現在,マウスのゲノム解析において,約7,400の遺伝子マーカーが明らかにされている.この数字は各マーカー間の平均距離が0.2cMあるいは400kBに達するもので疾患感受性遺伝子の同定が可能な状態にある.そこで,シェーグレン症候群に類似した唾液腺炎を含めた膠原病疾患群を発症するMRL/lprマウスと発症しないC3H/lprマウスとの交配により背景遺伝子を再構成したマウス,MRL/lpr x(MRL/lpr X C3H/lpr)F1や(MRL/lpr X C3H/lpr)F2マウス群に,唾液腺炎,関節炎,血管炎等をランダムに発症するマウスが存在することを利用して,まず,これらの唾液腺炎の病態,病理形質のマイクロサテライトマーカーを利用したDNA多型とのリンケージ解析を行い,唾液腺炎に関わる感受性遺伝子座を同定する.これまでの解析の結果、唾液腺炎をきたす疾患感受性遺伝子座が第1,第10,第18染色体上に,雌の場合にはさらに第4染色体上に劣性遺伝形式を示す遺伝子座がマップされた.また,雄雌両方,あるいは雌のみの場合ではこれらの遺伝子座がMRLホモ接合体のものが組合わさると発症率は高くなり,これらの遺伝子は相加的な関係を示していた.一方,雄のみをでは,遺伝子マーカーのD18Mit227,D1Mit494の一方,あるいは両方がMRLホモ接合体であってもAsm1遺伝子座がMRLホモ接合体でなければ発症せず,これらは階層的な関係を示した.このことは,MRL/lprマウスにおける唾液腺炎は個々の遺伝子だけでは効果が弱いが,いくつか組合わさっていくことにより相加的に,かつ階層性をもって発症に寄与するポリジーン系疾患であることを明らかにしている.
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