研究概要 |
本研究の目的は,顎関節における微量滑液検査法の確立である。すなわち顎関節のごとき小関節において,改良滑液採取法による微量滑液中の軟骨破壊成分および炎症関連物質の分析を行い,関節円板・滑膜および軟骨病変の診断に必要不可欠な診断マーカーを選択することである。 ケラタン硫酸(KS)はアグリカンの構成成分の一つで,滑液中のKSの定量はアグリカンの破壊を反映する指標として注目されてきたが,顎関節滑液中のKSの定量的測定は行われていない。 1.目的:顎関節における原液採取法による滑液検体を対象とし,滑液中のKS濃度を測定する。 2.対象:MRIにより顎関節内障と診断された女性患者55名(15歳〜68歳,中央値29歳)から採取された滑液62検体。なお,症例の内訳は復位性円板転位24検体,非復位性円板転位24検体,退行性変化を伴う非復位性円板転位14検体であった。 3.方法:KSの測定にはモノクロナール抗体1-20-5D4を用いた電気化学発光免疫測定法を用いた。 4.結果:62検体の全てからケラタン硫酸は同定され,KS濃度の最小値は64(単位:ng/ml),最大値39495.5,中央値798.06,平均値2490.89,標準偏差5452.01であった。KS濃度は円板病態の異なる3群間に有意差が判定されたとともに,ヒアルロン酸濃度コンドロイチン硫酸異性体比および最大開口距離との間には有意の相関が認められた。 5.結論:顎関節内障に膝関節における外傷性関節炎に類似の病態が存在していることを示唆する所見と考える。
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