研究概要 |
本研究の目的は,顎関節における微量滑液検査法の確立である。そこで、顎関節洗浄療法施行時の流出液を経時的に回収し、その中に含まれる炎症関連物質および軟骨代謝物質を分析した. 対象:1999年4月から2000年3月までの1年間に片側顎関節のみに関節洗浄療法を施行した14名のうち成人女性10名から回収された洗浄流出液を分析対象とした。対象の年齢は26歳から57歳、最頻値26歳、中央値39歳、平均値39.6であり、MR画像診断からいずれも変形を伴う復位を伴わない関節円板前方転位であった。 方法:(1)関節洗浄流出液の回収方法:通報に従い上関節腔に21G針を穿刺し、まず1%Xylocaine2mlにてパンピングを10回行った後、それを流入路とする。ついで2本目の21G針を穿刺し流出路とし、乳酸リンゲル液にて灌流した。流出液は試験管に約10mlづつ、20本目まで回収した。 (2)流出回収液の前処理:約10mlの流出回収液を真空遠心冷却装置を用いて約2mlになるまでそれぞれ濃縮した後、0.5mlづつに分注し、-70℃で保存した。 (3)分析法:軟骨代謝物質としてコンドロイチン硫酸異性体(ΔDi-6SおよびΔDi-4S)、ヒアルロン酸(HA)、およびケラタン硫酸(KS)を測定した。なお、ΔDi-6Sまたは4SおよびHAはHPLC法、KSはECLIA法により濃度を測定した。炎症関連物質としてIL-1β,TNF-α,IL-1βReceptor antagonist(IL-1βra),NaNO3(Nitrate)、NaNO2(Nitrite)およびタンパク量を測定した。なお、それぞれの物質の濃度測定にはBio Source Europe S.A.社製MEDGENIX IL-1βEASIATM kit(測定限界は2pg/ml)とMEDGENIX TNF-αEASIATM kit(測定限界:3pg/ml)、R&D systems社製Quantikine Human IL-1ra Immunoassay kit(測定限界:14Pg/ml)、BioDynamics Laboratory社製Nitrate)/Nitrite Colorimetric Assay Kit(測定限界は2.5pg/ml)を用いた。 (4)統計解析法:本学情報処理センター所有のSAS Ver.6.0を用い、ノンパラメトリック法によりP<0.05を有意水準とした。 結果:1から20本目までの検体におけるΔDi-6S、ΔDi-4S、HAおよびKSの同定パッターンはほぼ同様で、2本目まで同定される頻度が最も高かった.IL-1βは全例の1から20本目までの全ての検体で同定されたのに比べ、TNF-α,IL-1βra,Nitrate、Nitriteおよびタンパク量は同定される検体が少なく、そのパターンに一定の傾向は認められなかった。
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