我々はいくつかの癌細胞株をヌードマウスに移植しその生着性を検討した。最初、背部皮下に生着を認める細胞株を検討し、さらに口腔領域(舌、頬粘膜)へのinjectionで生着可能な細胞株を選別することが出来た。また、口腔癌で起こり得る頚部リンパ節転移のモデルも確立し、転移関連遺伝子導入の際の効果の検討に用いることとした。 ターゲット遺伝子は、接着分子であり抗腫瘍免疫反応を増大しうるCD80遺伝子にまず着目した。さらに、遺伝子導入効率を検討しながら、その他の遺伝子を選別した。特にヘパラネースは、脈管を構成する基底膜の主成分であるヘパラン硫酸プロテオグリカンの糖鎖を分解し、がん転移との関連性があると考えられており、実際、転移性が高くヘパラネース発現の高いいくつかの細胞株を対象とした。ヘパラネース遺伝子のアンチセンスの導入でがん転移抑制をうながすことが予想された。さらに、アポトーシス誘導遺伝子であるASK1についても検討した。 遺伝子導入については、in vitroの予備実験で検討を行なうも、レトロウイルスベクターでは、導入効率の低く導入には不適と考え、アデノウィルスベクターもしくは、プラスミド単体を用いることとした。前者に関しては、ベクターそのもののinject法を施行していったが、効率のよい導入は得られなかった。しかし、後者に関しては、鶏の初期胚においては、エレクトロポレーション法を用いることで、プラスミドの効率を高めることに成功している。発現はtransientなものがむしろ臨床的に扱いやすいと考えられる。今後、実際のヌードマウスの口腔腫瘍モデルにおけるターゲット遺伝子のエレクトロポレーション法によるプラスミド導入をさらに検討していく予定である
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