研究概要 |
当初の研究実施計画に基づいて,ウサギ上膝関節培養軟骨細胞にFlexercell strain unitを用いて過度の機械的伸張力(17kPa, 30cycles/minute)を負荷し,軟骨基質代謝並びにMMPとその阻害物質であるTIMP(tissue inhibitor of meralloproteinase)の遺伝子発現について検討を行ったところ,以下のような結果が得られた.なお,実験群として機械的負荷を加えたもの,対照群として負荷を加えないものを用いた. 1.軟骨細胞外基質産生に及ぼす影響について 機械的負荷により細胞形態が円形あるいは多角形から紡錘形へと変化し,伸張方向に対して垂直な配列を示した.また,実験群におけるトルイジンブルーおよびII型コラーゲンの染色性は著しく低下し,プロテオグリカン,ヒアルロン酸などの軟骨基質の産生低下が認められた. 2.基質分解酵素及びその阻害物質の遺伝子レベルに対する影響について RT-PCRサザンブロット法により,機械的負荷がMMP-1,-3,-9,TIMP-1,-2,.並びにサイトカインであるIL-1βとTNF-αのmRNAレベルを上昇させることが明らかとなった.一方,MMP-2のmRNAレベルはほとんど影響を受けなかった.さらに,蛋白合成阻害剤であるシクロヘキシミドの存在の有無に拘わらず,機械的負荷は,実験群におけるMMP-1,-3,-9及びTIMP-1のmRNAレベルを上昇させれことが明らかとなった.しかし,MMP-2とTIMP-2のmRNAレベルはほとんど影響を受けなかった. 以上の知見より,関節軟骨に作用する過度の機械的負荷は軟骨基質の産生低下と関節軟骨組織全体の脆弱化を引き起こし,さらにMMP,TIMP及びサイトカインの発現を直接誘導することが明らかとなった.また,軟骨基質内のMMP/TIMP比の不均衡により軟骨破壊が進行することが強く示唆された.
|