本システムの実用化に際し最も重要と考えられる計測データの有効性の確立に向け、計測誤差の最小化努力を払うと共に、計測データに対する統計学的ならびに臨床的検討を加えた。またコンピューターモニターでの一層の効率化を目指し、ソフトウエアの改良に着手した。その結果計測データ関連においては、歯軸傾斜角に代表される歯槽関連計測項目に一部計測方法ならびに計測データの工夫・見直しが必要と考えられる点が残っているものの、骨格関連計測項目を中心とするその他の項目では臨床的に有効と考えられる数値が得られた。各論として第1に、チェアサイドでの計測作業範囲の拡大と操作上の効率化を目指して追加購入したMicro Scribe-3DXL digitizerの性能評価を、日本工業規格JISおよび国際標準化機構ISOに準拠して受け入れ検査を行った。結果はメーカーの表示精度0.30mmに対し、本受け入れ検査では0.23mmという指示精度が得られ、臨床応用に耐える値と判断した。第2に、被験者の頭部固定については、当初計画した坐位から仰臥位に変えて体位の安定化を図ったうえで、頭部をマジックテープ付きバイドを用いてユニット・へッドレストに固定して計測誤差の最小化を行った。第3に、サンプル成人3人の徹底した繰り返し計測を行い、頭部X線規格写真分析結果との比較検討を統計学的、臨床的見地から行った。第4に、入手座標値の計測値変換操作の簡略化に向けたソフトウエアの改善に着手した。尚、本研究成果の一部は、第100回アメリカ矯正歯科学会年次総会(平成12年4月28日〜5月3日、於シカゴ)および第76回ヨーロッパ矯正歯科学会年次総会(平成12年6月2日〜6月6日、於ギリシャ国クレタ)において学会発表を行うと共に、一部は鶴見歯学第27巻第1号(平成13年1月発行)においても論文発表を行った。
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