研究課題
基盤研究(B)
複雑多岐な現代社会において、我々はストレスのもとに生活することを余儀なくされ、うつ病などの中枢疾患が急増している。また、うつ病は痴呆患者の随伴症状として現れることもあり大きな社会問題となっている。しかし、抗うつ薬の作用機序には未だ不明な点が多い。本研究において、まず中枢作用を有する新たな天然素材を開拓することを目的とし、種々の植物の抽出エキスのマウスの強制水泳試験における無動時間に対する効果を検討した。その結果、吉草根、ユーカリ、カカオおよびグァバなどの抽出エキスに顕著な無動時間の短縮が認められた。そこで、吉草根およびカカオの抽出エキスについて、マウスの強制水泳における無動時間の短縮を指標にして、活性成分を順次分画精製したところ、吉草根からケシルアルコール類およびカノコジオール、カカオからリグノセリルトリプタミンを単離することができた。そこで、これらの化合物の誘導体を合成し、構造活性相関について現在検討している。さらに、カノコジオールに神経成長因子(NGF)増強活性を見出した。PC12D細胞において、カノコジオールは、単独では神経突起伸張作用を示さず、NGFによる神経突起伸張を顕著に増強した。この作用はMEKの阻害剤であるPD98059によって一部しか抑制されなかった。また、カノコジオールによるMAP kinaseリン酸化の増強は認められなかった。カノコジオールの作用メカニズムの詳細を現在検討している。抗うつ薬の作用機序として5-HT_<2C>受容体の関与が示唆されているが、詳細は不明な点が多い。南天実の成分ナンテニンの構造活性相関の研究から強力な5-HT_<2C>受容体の阻害剤を見出した。現在、この誘導体の作用メカニズムを解明し、抗うつ作用と5-HT_<2C>受容体阻害作用との関連を明らかにすることを検討している。
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