ペプチド性細胞機能制御物質の合成と医薬品素材としての開発研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11557171
• 研究機関: 千葉大学
• 研究代表者: 濱田 康正 千葉大学, 大学院・薬学研究院, 教授 (90117846)
• キーワード: 環状ペプチドGE3 / ポリオキシペプチン / 細胞周期阻害 / アポトーシス / ピペラジックアシッド / (2S,3S)-3-ヒドロキシロイシン / (2S,3R)-3-ヒドロキシ-3-メチルプロリン / パプアミド

研究概要

本研究では3種の天然由来環状デプシペプチド、細胞周期阻害活性環状ペプチドGE3、アポトーシス誘起活性環状ペプチドポリオキシペプチン、抗HIV活性パプアミドの全合成研究を行うと共に同族体の合成を通して新しい作用機作を持つ抗癌剤、抗HIV剤の創製を目指している。これまでにGE3とポリオキシペプチンの両方に含まれる(S)-と(R)-ピペラジックアシッドと(2S,3S)-3-ヒドロキシロイシンの不斉合成法の開発とポリオキシペプチンに含まれる(2S,3R)-3-ヒドロキシ-3-メチルプロリンの短工程の合成法を開発した。(2S,3S)-3-ヒドロキシロイシンはイソ酪酸無水物とイソシアノ酢酸エステルから得られるオキサゾール誘導体からアシルアミノ酸誘導体を得、これをRu-(R)-BINAPで不斉還元して、98%eeの高い立体選択性で合成することに成功した。また、(2S,3R)-3-ヒドロキシ-3-メチルプロリンはメチルビニルケトンとN-トシルグリシンエステルとの分子間マイケル反応、分子内アルドール縮合による連続反応で一挙に基本骨格をラセミ体として得た。このものをカルボン酸とした後、光学分割を検討したところシンコニジンで分割可能であることが判明した。
パプアミド類の合成では環状骨格に含まれるβ-OMeTyrの絶対配置を決めるためガーナーアルデヒドからβ-OMeTyrの4種の異性体全てを合成した。また、環状構造を構築するために必要なD-(β-OH)LeuはRu-(S)-BINAPを用いる動的速度論分割法をより立体選択的に合成した。L-3,4-ジメチルグルタミンはグルタミン酸から不飽和双環状ラクタムを合成し、これに二つのメチル基を共役付加反応とアルキル化反応により立体選択的に導入し合成した。
β-OMeTyrの絶対配置は構造決定の際に得られているトリペプチドL-Hpr-β-OMeTyr-L-(N-Me)Thrもしくは環状デプシペプチド構造それぞれ4種を合成し,天然品とNMRを比較することにより決定する計画である。これまでに環状構造の前駆体の合成に成功し、閉環反応を検討中である。

研究成果

• [文献書誌] Naoki Okamoto, Osamu Hara, Kazuishi Makino, Yasumasa Hamada: "Stereoselective Synthesis of (3S,4R)-3,4-Dimethyl-(S)-glutamine and the Absolute Stereochemistry of Natural One from Papuamides and Callipeltin"Tetrahedron : Asymmetry. 12. 1353-1358 (2001)
• [文献書誌] Kazuishi Makino, Naoki Okamoto, Osamu Hara, Yasumasa Hamada: "Efficiently Enantioselective Synthesis of (2R, 3R)-and (2S,3S)-3-Hydroxyleucines and Their Diastereomers through Dynamic Kinetic Resolution"Tetrahedron : Asymmetry. 12. 1757-1762 (2001)
• [文献書誌] Takayuki Shioiri, Yasumasa Hamada: "Efficient Syntheses of Biologically Active Peptides of Aquatic Origin Involving Unusual Amino Acids"SYNLETT. 184-201 (2001)
• [文献書誌] Kazuishi Makino, Yoshiaki Hennmi, Yasumasa Hamada: "Synthetic Studies on a Cyclic Hexadepsipeptide GE3 : Stereoselective Construction of the Acyl Side Chain"SYNLETT. 613-615 (2002)
• [文献書誌] Kazuishi Makino, Ai Kondo, Yasumasa Hamada: "Synthetic Studies on Polyoxypeptins : Stereoselective Synthesis of (2S,3R)-3-Hydroxy-3-methylproline using SmI_2-mediated Cyclization"Tetrahedron Lett. 43. 4695-4698 (2002)
• [文献書誌] Kazuishi Makino, Tatsuya Suzuki, Shinobu Awane, Osamu Hara, Yasumasa Hamada: "Synthesis of the acyl side chain segment of polyoxypeptins using regioselective ring-opening of chiral 23-epoxy alcohol"Tetrahedron Lett. 43. 9391-9395 (2002)