研究分担者 |
有吉 範高 北海道大学, 大学院・薬学研究科, 助教授 (00243957)
高橋 芳樹 北海道大学, 大学院・薬学研究科, 助手 (80292019)
藤田 健一 北海道大学, 大学院・薬学研究科, 助手 (60281820)
小林 智 協和発酵工業(株), 医薬品総合研究, 所長(研究・開発担当)
上舘 民夫 北海道大学, 大学院・工学研究科, 教授 (70185990)
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研究概要 |
本研究では現在臨床応用されているCYPで代謝される医薬品の50%強の代謝反応に関与するチトクロームP450(CYP)分子種であるCYP3A4による薬物間相互作用をインビトロで効率的に予測するハイスループットシステム(HTS)構築を目指している.CYP3A4の代謝反応では,小胞体電子伝達成分のチトクロームb_5(b_5)が関与する例がしばしば観察されているが,現在までどのような医薬品の代謝反応にb_5が関わるのか明らかにされていない.しかしながら,CYP3A4による医薬品代謝を生体内により近い条件でインビトロで再現するためには,b_5の共存下で反応を行うべきことは避けられないと予想される.そこで本年度はまず,ヒトのb_5を大量に発現可能な大腸菌発現系の開発を目指し,大腸菌用の発現ベクターpCWに,当研究室で単離したヒトb_5cDNAを挿入し,b_5発現プラスミドを構築した.Westernブロッティングおよび,酸化-還元差スペクトルより,b_5の発現を確認した.ついでb_5が局在する膜画分を調製し,現在臨床応用されている約15種類の医薬品の,CYP3A4での代謝を,b_5非存在下とb_5存在下で比較検討した.検討した医薬品のうち,汎用されているCa拮抗薬であるジルチアゼム,抗うつ薬のイミプラミン,デシプラミン,アミトリプチリン,クロミプラミンなどの薬物は,b_5の共存によりその代謝活性が顕著に上昇したが,同じ抗うつ薬でもノルトリプチリンでは,b_5共存下でその代謝が40%まで抑制された.その他の医薬品については,b_5共存下非共存下でも代謝活性にほとんど差が認められなかった.以上のことから,CYP3A4のHTSを構築する場合,b_5共存下で反応を行うことは,CYP3A4が代謝を触媒する医薬品によってはその活性に顕著に影響することを明らかにした.今後はさらに多くの医薬品の代謝におけるb_5の影響を検討し,医薬品の構造-b_5要求性相関を明らかにすることで,生体内をより正確に予測できるHTS構築の基礎的情報を得る必要があると考えられる。
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