研究課題/領域番号 |
11557185
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
河野 通明 長崎大学, 薬学部, 教授 (00027335)
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研究分担者 |
松村 功啓 長崎大学, 薬学部, 教授 (60026309)
河野 功 長崎大学, 薬学部, 教授 (20038607)
尾崎 恵一 長崎大学, 薬学部, 助教授 (50252466)
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キーワード | MAPキナーゼカスケード / ERK-MAPキナーゼ / JNK / 特異的阻害剤 / 抗がん剤 / ポリフェノール / 分子標的 |
研究概要 |
1.HGF/MDCK細胞系を利用した解析より、ERK-MAPキナーゼ系がMMP-9遺伝子の発現制御を介して、細胞運動亢進作用の発現において必須の役割を果たしていることを見出した。MMP-9は癌細胞の基底膜浸潤において重要な役割を演じていること、ERK-MAPキナーゼ系が恒常的に活性化されている多くの癌細胞においてはMMP-9の発現亢進が認められると同時にその運動性も亢進していること等を考え合わせた際、ERK-MAPキナーゼ系の選択的遮断は癌細胞の転移制御にもつながる可能性が示唆され、これよりもERK-MAPキナーゼ系を構成するシグナル分子が今後の抗癌剤開発における絶好の標的分子であることを確認した。 2.ERK-MAPキナーゼ系が恒常的に活性化されている癌細胞株において、MEK阻害剤でそれを選択的に遮断した際、顕著なG1期集積に伴う増殖停止を認めたが、それだけでは有意なアポトーシス誘導に至らなかった。そこで、他の作用機構を持つ薬剤と併用することでその抗癌作用が増強される可能性を検討した結果、MEK阻害剤とチューブリン重合阻害剤と組み合わせた際のみ、極めて顕著なアポトーシス誘導の増強を認めた。上記薬剤の組み合わせが癌細胞に対して顕著なアポトーシスを誘導する分子機構など、今後解明されるべき点も多く残されているが、本研究によりERK-MAPキナーゼ系遮断剤を基盤とした新規癌化学療法の開発に向けて大きな契機をつかむことができた。 3.茶葉から単離したポリフェノールの一種、(-)-epigallocatechin-3-gallate (EGCG)およびその類似化合物が、ERK-MAPキナーゼ系を選択的に遮断することを見出した。なお、EGCGなどの標的はMEK以外の分子である可能性が高い。 4.c-Jun N-terminal kinase (JNK)に対する特異的阻害剤として報告されたanthrapyrazolone誘導体、SP600125を合成し、その有効性を様々な培養細胞系において確認した。なお、SP600125が極めて難溶性であることにより、親水性基の導入、アミノ基の修飾等によってその水溶性の向上を図ったが、現時点では有効な誘導体の開発に至っていない。
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